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Episode No.063:人のいましめ

"人の一生は重荷を負て遠き道をゆくがごとし"

徳川家康の言葉として残されているこの名文句には、次のような続きがある。

"急ぐべからず。不自由を常と思えば不足なし。心に望みおこらば、困窮したる時を思ひ出すべし。堪忍は無事長久の基。怒りは敵と思へ。勝つことばかり知りて負く事を知らざれば、害その身に到る。おのれを責めて、人を責むるな。及ばざるは過ぎたるよりまされり"

この中にも、どこかで聞いたことのあるような有名な言葉がいくつも登場する。

しかし、実を言うとこの言葉を家康が残したという確固たる根拠は、どこにもない。
一説によると、これらは1830年(天保元)に出された『人のいましめ』という本が元になっているという。
その作者は、水戸黄門として知られる徳川光圀とされているが、それも明らかに光圀の作であるとは断定されていない。

いずれにしても過去の賢人が残した人生訓であることに間違いはないが、一度きりの人生を楽しく気楽に生きたいと思う人にとっては、少々重過ぎる言葉ではある。

例えば、住宅ローンにしばられて生きるより、アパート暮らしの方がいい・・・そう思う人もあるだろう。
それは、それとして、その人の生き方、考え方ではあるが、アパート暮らしもタダではできない。

どんなに軽い荷物でも、持ち続ければ重く感じてくるものだ。

生きている以上、空腹や寒さからは逃げることはできはない。そのことを忘れてまで気楽に生きたいと思うのは、問題を先送りしているだけのこと。

本当の楽しさや充実感は、重たいバーベルを持ち上げた瞬間にこそ感じることができるのではないだろうか。挑戦できるのは、体力のあるうちだ。


参考文献:「名言の内側」外山滋比呂ほか=著 福武文庫=刊

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