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Episode No.050

その猫は、銀色の鼻を持っている。

ヒゲは左右に2本ずつ。その昔は、今より細かくなっていたが、現在はシンプルにまとまっている。
目のまわりは真っ黒で、猫というよりパンダに見えなくもないが、よく見るとマブタにはグリーンのアイシャドウをほどこしている。

この文章から、あの顔を思い浮かべることができたとしたら、あなたは相当なロック・マニアだ。

そう、この顔は、もちろん本物の猫のことではない。
今から、ちょうど25年前の1973年。歌舞伎のくまどりを模した奇抜なメイクで人気を博したロック・バンド"KISS"。そのドラマーを勤めたのがキャット・マンこと、ピーター・クリスだ。

"KISS"は、デーモン木暮ひきいるロック・バンド"聖鬼魔II"の元祖とも言えるバンドで、"デトロイト・ロック・シティ"や"ラヴ・ガン"などノリのいい曲をはじめ、"ベス"や"ハード・ラック・ウーマン"などバラード系の曲にも人気があった。

バンドの人気が頂点に達していた76年。ピーター・クリスは3ヶ月の重傷を負う事故にあった。
ピーターが入院中にもかかわらず、バンドが新作のレコーディングを進めたことから、メンバーとの折り合いが悪くなり、80年に"KISS"を脱退。以後、地味なソロ活動を続けていた。

"KISS"は、その後もメンバーを入れ替えて活動を続けていたが、結成当時のオリジナル・メンバーによる人気にはおよばなかった。

そして、96年。MTVの企画で再結成された"KISS"は、ツアーをはじめ本格的な活動も再開。17年ぶりに新曲もリリースする。
実はMTVでの再結成に先だって、ロスで"KISS"のコンベンションが行われ、そこで何年ぶりかでオリジナル・メンバーがお馴染みのメイクをしてステージに上がった。

「ボクは、そこにボクの娘を連れて行って、本物のKISSを見せてあげたいと思ったんだ。娘はその時、14歳。彼女は自分の父親がメイクをしてゴールド・レコードを売ったことをよく知らないからね」

1947年12月20日ニューヨーク生まれのピーター・クリスは間もなく51歳。

ちなみに長い舌を持つベースのジーン・シモンズは元、小学校の先生。
かつての教え子たちも自分の子供を連れて、再結成した"KISS"のライヴを見に行くのかも知れない。


参考文献:「リズム&ドラム・マガジン 1998.11」リットーミュージック=刊

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