Episode No.039
「揚子江に和を契った戦友たちのためにも、日本の復興に人生を捧げる」
終戦直後の混沌とした中、日本の復興をかけて立ち上がった男がいる。
第二次大戦中、中国、ビルマ、インドと激戦地を駆け抜けて、命からがら日本に復員した彼が見たものは、焼け野原と化した街と、真っ赤な口紅に派手な服をまといアメリカ兵に抱かれる女性たちだった。
「日本の女性をあんなに醜くしてはいかん。日本の女性を美しくしなければ」
そんな強い思いを胸に彼は、復員したその日に模造真珠のネックレス販売会社を興した。
当時の社名は「和江商事」といった。
近江商人だった彼の父親が経営していた呉服卸商の名称から付けられたものだが、この「和江」という言葉に、彼は特別な意味合いを感じとっていた。
それが
「揚子"江"に"和"を契った戦友たちのためにも、日本の復興に人生を捧げる」
である。
1957年(昭和32)、社名を「ワコール」に変更。
今や世界でも一流の女性用下着メーカーであることは、ご承知の通り。
「この世に難関はなくて、難関だと思う人があるだけなんです」
自分が歩んできた道を振り返って、そう語る創業者の塚本幸一は、惜しまれながら今年6月に亡くなった。 |