Episode No.378(991111):陽水と拓郎
実は先日、風邪をおして井上陽水のコンサートに行って来た。
さらに数ヶ月前には、吉田拓郎のコンサートにも行った。
今日は、一時代を築いた2人のフォークシンガーを通して私が見たモノについて書こうと思う。
私が中学時代の頃には、フォークギターが流行っていた。
覚えるコードが少なくて済む陽水の『夢の中へ』や拓郎の『落陽』が入門曲。
それから『22才の別れ』で3フィンガーを覚えるというのが、だいたいのパターン。
だから、私もそこまではできる。
陽水と拓郎・・・どったが好きか? と聞かれたら、私は間違いなく"拓郎"と答えていた。
陽水の歌は暗い、『氷の世界』とか『傘がない』なんて、憂鬱になる情景の歌だと思っていた。
それに比べたら拓郎の歌は明るく力強いモノが多い。
受験の朝には必ず『明日に向かって走れ』を聴いてから出かけたモノだ。
ところが・・・。
最近、コンサートで陽水や拓郎の歌を久しぶりに聴いてみると、圧倒的に陽水の歌の方をよく覚えている自分に驚いた。
どうしてこんなに歌詞がスラスラと出てくるんだ・・・?
最も拓郎のコンサートでは、新しい曲が中心で知らない歌も多かった。
昔の歌は「一部マニアの人向け」と言って歌った程度・・・でも、そこが一番盛り上がっていた。
もちろん陽水も最近の曲まで歌っていたけど・・・。
『少年時代』にはじまって、アンコールは『夢の中へ』。
ほとんど知られた曲ばかり・・・それだけヒットの数が多いというコトでもあるだろう。
正直言って、今回は陽水の方がよかった。
見終わって、まず感じたのは「陽水って商売人だよなぁ」・・・というコト。
見に来た人たちが自分に何を求めているのかを知るプロフェッショナルだというコト。
拓郎も、もちろん何十年やってるプロには違いないが、アマチュア時代の熱を忘れずに、つねに自分のやりたいコトと向き合っているという感じ。
そこが、拓郎の良さでもあるんだけれど・・・。
使い古されたネタだけれど、陽水の『リバーサイドホテル』の歌詞には、表現としておかしい部分がある。
「部屋のドアは金属のメタルで」と言われると「金属なんだからメタルに決まってるじゃん」と言い返したくなるし「川沿いリバーサイド」に至っては「じゃあ最後のラストシーンっていう言い方のアリ?」と聞きたくなってしまうが、あのメロディにのせて、あのちょっと回転が狂ったレコードのような独特の声で聞かされると納得してしまう・・・やっぱりプロだ。
井上陽水はデビュー当時、子門真人の真っ青のカーリーヘアだったが、その若い頃、結婚したい相手がいて、相手の父親に会った時に「そんな頭のヤツにはやれん」と断られた話をどっかで読んだ。
音楽性については私がとやかく言える筋合いのモノではないが、想像するに陽水はその時「必ずこの頭で大金持ちになって見返してやる」と心に誓ったに違いない。
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