1810年。イギリスの卸売商ピーター・デュランドは、これまでの自分の商売を爆発的に伸ばす、画期的な発明をした。
「スズの小箱」と言われた彼の発明品は、食品の携帯性、保存性に優れ、すぐさま英国海軍の軍用食としても採用された。
「スズの小箱」・・・今は誰もこうは呼ばない。普通「缶詰」と呼んでいる。
ピーターの「缶詰」は、開発されて7年後にはアメリカにも伝わったが、アメリカで「缶詰」がポピュラーなものとなるのは、それより44年後。1861年になってからのこと。
南北戦争の勃発が、軍用食としての「缶詰」をアメリカ全土に普及させたというわけだ。
ところで44年もの間、「缶詰」が普及しなかったのには、大きな理由があった。
「缶切り」が発明されていなかったのである。
「缶切り」の原型がアメリカで発明されたのは、「缶詰」の発明に遅れること半世紀。1858年になってからの話。
それまで兵隊は「缶詰」をライフルで撃ち抜き、「缶詰」のフタには「ノミとハンマーで上面を丸く切ること」という注意書きがついていたという。 |