Presented by digitake.com

 

Episode No.190(990406):つまらない勉強、楽しい勉強

小学校に入学して、九九の勉強が始まって、宿題が出るようになると「いいな、大人は。勉強しなくていいから」なんて思うようになる。

しかし実際に大人になってみると、大人の方がよっぽど勉強しなければならない。
子供が勉強しなくても、せいぜい成績表に影響するくらいだが、大人が勉強しないと賃金に差が出てくる。
ヘタをすると金がとれなくなる・・・なんてことさえある。

仮に働いてはいないとしても、一人前の大人として一般常識くらいは身につけておくべき。
だが、その一般常識というのも日々変化しているわけで「勉強はここまででいい」なんてことはない。

テレビのニュースを見ていると必ず外国為替市場の話題が出てくる。
かつて、ある新聞社のデスクがカメラマンに「外国為替市場の写真を撮って来い」と命令したなんていう笑い話があるそうだが、これが何故、笑い話なのかすぐわからない人も少なくないのでは?

外国為替市場は、築地の市場のように、そういう場所があるわけではない。
銀行同士が電話などの通信によってやりとりをしているだけで、いわばバーチャルな市場。

でも、それでは絵にならない・・・ということでテレビのニュースなどでは、銀行のディーリング・ルームや「上田ハーロー」という場所が映し出されることが多い。
円卓を囲んで、両肩に電話をかけた人たちがメモを投げ合っている・・・アレだ。

「上田ハーロー」の正式名称は「上田ハーロー株式会社」。
つまり、あの部屋は会社の一室。
1918年(大正7)に設立された上田商店は、3年後に大阪で外国為替業務を開始。1942年(昭和17)に上田短資株式会社と改称した後、イギリスの「ハーロー」という会社と合弁して1985年(昭和60)から業務を開始しているのが「上田ハーロー株式会社」だ。

毎日のようにニュースで見ている「上田ハーロー」が、一企業名であることを知らない大人も多いかも知れない。

ちょっと気になったことを調べてみる・・・というだけも充分勉強になると思うんだが、いきなり勉強・・・と聞くと、それだけでソッポを向きたくなってしまうのは、やはり学校で勉強の楽しさを学ばなかったからだろう。

ちなみに外見の印象がよくないと、その中味まで嫌いになってしまい、外見が好印象なら中味もいいと思いがちな傾向をアメリカの心理学者E・L・ソーンダイクは、太陽や月にかかるカサに例えて"Halo effect ハロー効果"と呼んでいる。

「上田ハーロー」のハーローとは違いますよ。念のため。


参考資料:「ニュースの大疑問」池上 彰=著 講談社=刊
     「上田ハーローホームページ」http://www.ueda-net.co.jp/hb/index.html
     「自分を奮い立たせるこの名文句」大島正裕=著 三笠書房=刊

[ Back to TopBacknumberご愛読者アンケートBBS 御意見番BBS 保存版 ]