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Episode No.182(990327):便利な生活

便利な世の中になった・・・。

こう思うことは少なくないだろう。
じゃあ、いったい便利さって何だろう?!

便利さを感じさせてくれる道具に共通して言えるのは、ひと言でいって「スピード」が早いことだ。
乗り物にしても通信手段にしても、そのスピードが便利さの度合いを決めている。

ところで何故そんなにスピードが大切なのか?!

かつて外交員としてドイツに赴任していた叔父から、こんな話を聞いたことがある。
その昔、電報で日本と交信していた頃は、連絡をとるのに物理的な時間が1日かかった。
テレックスやFAXの時代に入ると、すぐに返事が来る。
返事が来れば、即、次の仕事にかからなければないない。
そんな様子を見ていた現地のドイツ人に「何故、便利になったのに、かえって忙しくなったんだ?」と聞かれて返事に困ったそうだ。

こういう話の展開になると、大抵は「スピードを追求していてもキリがない」とか「便利だからといって幸せになれるはずはない」とかいう結論に落ち着く場合が多いようだが、私はそうは思わない。

確かにスピードが増せば増すほど、まるでシューティング・ゲームでもしているように息つく暇もなくなる・・・ということはあるだろう。
でも、便利さもスピードは大切だと思う。

まず、現実を否定しても意味がない。
現実社会で生きていかなければならないのだから逃避していては今を生き抜けない。

こんなに便利な道具がたくさんあるのに活かさないのは、やっぱり時間の無駄遣い。
最も時間の無駄遣いをしない訓練を受けている人間は、パソコンなどなくても目の前にある鉛筆1本をフルに使いこなすだろう。

締め切りに追われた手塚治虫が、仕事場に着くまでの移動時間中、アイデアを練る。
とにかく着いたら、すぐに書き始めなければ間に合わないので、アレやコレやと移動している間中、考えている・・・と、アイデアが落ち着く先は、いつも最初の5分間に考えたものだったという。

時間をかけなければできないことは確かにある。
しかし、時間をかけたからといってイイものができるかといえば別問題。

時間がかかるのは、結局、仕事が遅いだけで、仕事が早い人ほどコツをつかんでいて間違いが少ないことが間々ある。

第一、作業が早ければ万が一の場合にもやり直す時間はあるが、ギリギリでは間に合わない。
それが本当の余裕というものだ。

便利な道具をフルに活かして、生きてるうちに、いろんなことをしてみたい・・・そう思う。


参考資料:「手塚治虫・創作の秘密」NHK VOOK ほか

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