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Episode No.166(990309):天国の指定席

この世に生まれ出た瞬間、命あるものは死に向かってスタートをきることになる。
命に限りがある以上、どんなに成功した者でも"不安"から逃れることはできない。

何が成功かは、人によってさまざまだろうが、自分がやろうとしていることが、まだできていないとすれば不安は、より一層大きなものになるだろう。

不安を解消するためには、結局、頑張って自分の実力を少しでも向上させていくしかないのだが、この実力というヤツもなかなかハッキリと目に見えるモノではないので、現実社会の中では実力=金と権力という風にとられがちだ。

確かに実力さえあれば、権力や金はついてくるモノかもしれない。

しかし、権力や金が実力・・・ことに人間的な魅力を築いてくれれたり、その人に幸せをもたらしてくれるかと言えば、決してそうではない。

ルーマニアのベッサラビアという村がある。
ワインの産地として知られた村だ。

1937年、その村でひとりの牧師が警察に逮捕された。

教会の奥の部屋から押収されたのは「大天国地図」と書かれた大きな地図。
神様の位置を中心にマス目と番号が書かれていて、さながら分譲住宅の地図だ。

この牧師が村人相手に売っていたのが「天国の指定席券」。
神様に近づくほど値段は上がり、"かぶりつき"の席は"王様用"、"貴族用"として村人には売らなかったという。

迷信深い人が教会に来ると、言葉巧みに奥の部屋に誘い込み、この「大天国地図」を見せながら「天国の指定席券」を売りさばき、莫大な金をせしめた牧師だったが、ひとつだけ大きな誤算があった。

それは、あまりに人気が高くなり過ぎてしまい、ついには警察にまでこの話が伝わってしまったことだ。

警察が押収した数枚の「大天国地図」は、いずれも"予約済"の印でいっぱいだったという。


参考資料:「日録20世紀 1937/昭和12年」講談社=刊

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