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Episode No.154(990223):適度に、ちゃんと、やろう

先日、東京・品川でレールを工事していた作業員が、臨時列車にはねられて死亡するという事故が起こった。

原因は『遅刻』。

通常は臨時列車を確認してから作業に入るところ、作業員たちが現場に到着するのを遅刻したために、確認を怠って作業に入ったのが事故につながった。

約束した時間通りに仕事を遂行しないと思わぬ事故につながることがある。
人身事故にまではならなくとも大勢の人たちに迷惑をかける危険性はつねに考えなければならない。

いわゆるクリエイティブな仕事をする人の中には、一般の人と比べてわりとルーズな人が多い。

漫画の神様、手塚治虫が自分の納得いかないモノは描かなかったために、いつも締め切りに追われるハメとなり、編集者たちからは手塚オソ虫と陰口をたたかれていたという話もある。

逆に、きわめて時間にやかましい作家もいた。

何月何日の何時に原稿を取りに来いと連絡すると、必ずその時間までに原稿を上げるのはもちろんのこと、
待ち合わせなど人との約束は必ず守る。
相手が約束の日を勘違いして会えなかった時などは、もうその相手は出入り差し止めで二度と会おうとしない。
軽く頼まれたことでも一度引き受けると答えたら絶対にやる。

ある時、彼が海外旅行へ行くことになって、父親は「もし寄れたらダンヒルの煙草入れを買ってきてほしい」と彼に頼んだ。
引き受けた彼は、何軒もの店をまわって頼まれた品物を買ってきた。
親孝行のエピソードと、とれない話ではないが、父親自身、これは倅の几帳面過ぎるほど几帳面な部分であると・・・語っている。

他人や自分を裏切れない几帳面さは、とても素晴らしい努力の結果ではあるが、度を過ぎると危険をともなう。
理想に反した現在の体制を立て直そうと思いつめた彼は、自衛隊に突入する。

そう、これは三島由紀夫の話だ。

過ぎたるは及ばざるがごとし・・・とは言うが、できないのでは話にもならない。

物事は徹底的にやるよりも適度にやることが一番難しい。


参考資料:「倅・三島由紀夫」平岡 梓=著 文春文庫=刊 ほか

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