彼にとって、お役所の仕事は退屈極まりないものだった。
任された仕事が常々非効率的であると感じていた彼は、その仕事を効率よくこなすための早見表を考案した。その結果、それまで1ヶ月かかっていた仕事は2、3日で片づいてしまうようになった。
しかし当時、お役所の仕事は事務の効率化より、型にはまったことをちゃんとこなしているかどうか・・ということで人を評価するようなところがあった。つまり、9時から5時まで席にいることが仕事なのである。
当然、彼の肌に合うものではない。
彼は32歳で独立する。
「オリエンタル・サンダルを売ろう! ・・・ゴムぞうりだよ。こりゃ売れるぞ」
そう力説する彼の言葉に、まだ数人しかいなかった従業員たちは、アッケにとられた。なおも彼の力説は続く。
「花はきれいだ。そのきれいな花をつければ、ぞうりをはくことが楽しくなるはずだ。そうしたら、きっと良く売れる。人を楽しくさせることで我々は儲けるんだ」
彼の名は、辻 信太郎。サンリオを創った男である。 |