江戸時代の話。
紫ちりめんの振袖が、とある古着屋に売られていた。
今とは違って、着物は"買う"より作る時代。新しい着物を買うことができるのは、ごく限られた層の人々だけ。庶民にとって古着屋は実に身近な存在だったことだろう。
さて、この紫ちりめんの出所はハッキリとはしないが、ともかく古着屋でこの振袖を目にとめたのは、やはり若い娘。
娘は、紫ちりめんを買って帰ると、大切に愛用した。
・・・が、運悪く病に倒れ、そのまま亡くなってしまう。
こうして、再び紫ちりめんは古着屋の軒先に吊り下げられることになった。
ここからが謎のはじまり。
この紫ちりめんを買っていった娘が、たて続けに2人もこの振袖に手を通した直後から病に倒れ、やがて死んでしまった。
最初の娘から数えると連続して3人。
しかも3人が亡くなったのは、いずれも1月16日。
毎年、決まった日に若い娘を死に至らしめる紫ちりめんの怪。
この話を聞きつけた本妙寺の和尚は、この恐ろしい因縁を断ち切るために、紫ちりめんの振袖を焼き払うことにした。
しかし、炎に投げ入れた瞬間、突如吹いてきたつむじ風にあおられ、振袖は火がついたまま空に舞い上がると寺の本堂に飛び込み、あっという間に一面を火の海に・・・!!
これが死者10万人を越える江戸時代最大の大火といわれる"明暦の大火"。別名"振袖火事"である。
今から、ちょうど342年前の今日、1月18日の話。
皆さん、火の元と紫ちりめんには充分、気をつけましょう。