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Episode No.123(990118):紫ちりめんの怪

江戸時代の話。

紫ちりめんの振袖が、とある古着屋に売られていた。

今とは違って、着物は"買う"より作る時代。新しい着物を買うことができるのは、ごく限られた層の人々だけ。庶民にとって古着屋は実に身近な存在だったことだろう。

さて、この紫ちりめんの出所はハッキリとはしないが、ともかく古着屋でこの振袖を目にとめたのは、やはり若い娘。

娘は、紫ちりめんを買って帰ると、大切に愛用した。
・・・が、運悪く病に倒れ、そのまま亡くなってしまう。

こうして、再び紫ちりめんは古着屋の軒先に吊り下げられることになった。

ここからが謎のはじまり。

この紫ちりめんを買っていった娘が、たて続けに2人もこの振袖に手を通した直後から病に倒れ、やがて死んでしまった。

最初の娘から数えると連続して3人。
しかも3人が亡くなったのは、いずれも1月16日。
毎年、決まった日に若い娘を死に至らしめる紫ちりめんの怪。

この話を聞きつけた本妙寺の和尚は、この恐ろしい因縁を断ち切るために、紫ちりめんの振袖を焼き払うことにした。

しかし、炎に投げ入れた瞬間、突如吹いてきたつむじ風にあおられ、振袖は火がついたまま空に舞い上がると寺の本堂に飛び込み、あっという間に一面を火の海に・・・!!

これが死者10万人を越える江戸時代最大の大火といわれる"明暦の大火"。別名"振袖火事"である。
今から、ちょうど342年前の今日、1月18日の話。

皆さん、火の元と紫ちりめんには充分、気をつけましょう。


参考資料:「今日は何の日」PHP研究所=編

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