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Episode No.121(990115):万国共通語は存在した

コンピュータ言語の基本は英語だと言う。

言葉の違いは文化の違い・・・とも言われるが、自国の文化をとくに重んじる国、フランスでは国をあげて英語文化に毒された現代を見直そう・・・という動きもあるようだが、コンピュータが、ここまで普及してしまった現代において、事実上、英語が世界の共通語として君臨していることは、誰も否定できないであろう。

ひと度、世界に出てしまえば英語は確かに万国共通に使える言葉なのかもしれないが、世界中どこの国のどんな場所に行っても通じるかといえば、そんなことはない。

現に日本で生活する私たちに、いきなり英語を「話せ」と言われても「話せない」人がほとんどだろう。少なくとも中学、高校の6年間も勉強してきたにもかかわらず・・・。

じゃあ万国共通語ってナンだ? と、いえば、スバリ! 喃語(なんご)である。

喃語とは生後2ヶ月くらいたった赤ん坊が話す言葉。
言葉とは言っても「アー」だとか「ウー」だとか言っているだけの話だが、厳密に言うと、泣き声や叫び声のような緊張の高い"叫喚"といわれる声と、"穏やかで柔らかな声"の2種類に分類される。

"叫喚"は、たいていの動物にもあるが、"穏やかで柔らかな声"の方は人間特有のもの。
だから"言葉"だと言えるらしい。

1歳くらいまでの日本とアメリカの子供の喃語を調べてみると、そこにはほとんど差が認められない。
日本とアメリカに限らず、喃語は世界中の言語のもとになるあらゆる音が含まれているという。

赤ん坊は、育つにつれて万国共通語である喃語の中から、日本人であれば日本語に適した発音だけを残して、ほかを徐々に捨て去っていくのだという。

0歳から1歳、2歳と年を重ねていくように、知識や技術もゼロから始まって少しずつ自然に増えていくのが成長することだと思いがちだが、本当は、とりあえず必要な知識だけを残して、本来あった無限の力を少しずつ捨て去っていくのが、年をとるということなのかもしれない。

人間の脳のうち、実際に使う部分は限られている・・・と言うし・・・ね。

そういえば、岡本太郎が晩年、テレビでこんなことを言っていた。

「最近ようやく、自分が子供の頃に描いた絵に近づいてきたように思う」


参考資料:「赤ちゃんはどうして言葉を身につけるのか」日本経済新聞社科学技術部=編 日経サイエンス社=刊

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