26歳の若き経営者は苦境に立たされていた。
ヒットを放った自らの企画の権利を大会社に横取りされたうえ、今日まで育ててきた従業員達は、あらかた別の会社に引き抜かれていくことになった。
信じられるのは、同じ会社に働く兄弟と元従業員だった妻、本当に信頼のおける数人のスタッフ。そして自らの才能だけだ。
彼に残された道は、新しい企画でこの苦難を乗り越えること。
しかし、その作業を裏切り者の従業員達に知られるわけにはいかない。
従業員達が帰宅した後に、必要な機材を自宅のガレージに持ち込んで、兄や妻、数人のスタッフと深夜まで作業を続ける毎日。そして朝には何事もなかったように会社に機材をもどしておく必要があった。
こうして1928年5月。1本の短編アニメーション映画が完成した。
主人公の名は「ミッキーマウス」と名付けられた。 |