Episode No.6816(20200616):[挑戦]Challenge
助蔵物語・制作ノート〈32〉
最初の読者
「助蔵物語」はタイトル通り…
ハリスに仕えた
西山助蔵の伝記物語なのだが
助蔵だけでなく
共にハリスに仕えた盟友である
村山瀧蔵についても
これまで語られることはなかったし
先に紹介した通り
ハリスの通訳として一緒に来日した
ヒュースケンについても
都合のいい狂言回しとして
登場することはあっても
彼が何故
ハリスの通訳になったのか
…ということについては
まっとうに描かれていなかったと思う
そして何と言っても…
「唐人お吉」の物語ばかりが
有名になってしまった…斎藤きち
実際のお吉は
泣く泣く玉泉寺に行っていない
ほかに行く者がいなきゃ
ワチキが行ってやらぁ
…と
胸のひとつもポンと叩いて
自ら出向い行ったことは
お吉研究家として知られる
村松春水翁も書いている
それを元に悲劇として
演出したのが
小説家の十一谷義三郎
…と
義三郎の小説がウケたことに続いて
芝居や映画や歌謡曲を作った人々
ひと度
演出が加わってしまうと
そこに関わった人たちもみな
史実を離れ
物語の中でひとり歩きしてしまう
お吉を玉泉寺行きに口説く役にさせられた
下田奉行の伊佐新次郎もまたしかり…
「助蔵物語」は
可能な限り史実に忠実に書きたかったので…
そうじゃないと失礼だと感じたので…
史実からの想像はふくらませた部分はあっても
想像から物語は一切作っていない
そのために…
瀧蔵もヒュースケンもお吉も
ハリスについても
少々大げさに言えば
それぞれの伝記が書けるくらい
調べ上げた上で
助蔵との関わりだけを
ピックアップして書いたつもりだ
そういう意味では
自分の考えでは何も書いていない
「助蔵物語」の最初の読者は自分で
自分が知った話を
何とかみんなに伝えようとしてるだけ
だから、人生日々更新