Episode No.6527(20190715):[挑戦]Challenge
歴史を書く
How to write history
新しい物語を書いている。
性懲りもなく、また歴史物語だ。
「唐人お吉」の真相と、
誤解されて続けてきた、
斎藤きちの気持ちを伝えたくて、
試行錯誤しながら書いた「安直楼始末記」
つたな過ぎる小説が、
一応、完成したのは2017年3月だった。
その後、すぐに改稿したが、
もっと伝わりやすいものにしようと、
1年後の2018年3月に漫画版を作った。
去年の秋口から、
お吉さんの盟友でハリスの小間使いだった
西山助蔵の伝記「助蔵物語」も漫画で制作中。
シナリオはとうに完成しているが、
今、漫画家さんに頑張ってもらっている。
その間にまた別の話を書こうというわけ。
今度は下田ではなく、今住んでる横浜の物語。
時代はお吉さんの頃と同じ、幕末明治が舞台となる。
そもそも横浜の歴史に興味が出てきたのも、
国際港が下田から
横浜に移されたということを知ったから。
そのことを学校で習った記憶がないのは、
小学校まで東京にいたからだと思っていたが、
横浜生まれの友人に話しても、
知らない人だらけだった。
歴史に対する知識など、
一般的にはそんなものなのか
…と、あらためて感じた。
歴史が好きだ、多少は知ってる
…という人の話を聞いても、
たいていの人が口にするのは、
小説を読んだり、ドラマで見たりした
歴史物語の内容を話す人がほとんどで、
年表を覚えている人など、まずいない。
物語仕立てになっていないと、
歴史はうまく伝わらないものだと実感した。
研究者は別にして、
一般の人たちが知りたいのは、
何年に何があったか
…ということではなく、
その時、先人たちは、
何を感じて、どう頑張ったのか。
おそらく感じていることは、
現代を生きる我々とも変わりがなく、
そこでの頑張りを知ることによって、
今を生きる自分に勇気をわけて欲しい
…ということだろう。
自分が伝えたいことも、
センセーショナルな真相が中心ではなく、
歴史上の出来事に対して、
その時代に生きた人は
何を感じて、どう頑張ったのか
…故に物語の方が適しているはずだ。
むろん、
史実は踏まえなければならない。
そうでなければ歴史物語とは言えないから。
架空の人物を設定する方法もあるが、
実在の人物を描くであれば、
切り口や解釈に違いはあるにせよ、
史実を変えてしまっては冒涜に値する。
史実を踏まえるつもりがないなら、
最初からSFを書いた方が罪はない。
丹念に年表を作れば、
それはそのまま「あらすじ」になる。
人物関係などを整理していくと、
さまざまな感情も垣間見えてくる。
ようするに、
物語を書く…とは言っても、
史実の収集と分類整理がほとんどで、
描けそうな部分をチョイスし、
構成するだけ…。
歴史に名を残すほどの人は、
たいていみんな
キャラクターが立っている。
人物を創造する必要はない。
あとはそれをどこまで理解し、
自分と同化させられるか…。
それがうまくいけば、
気の利いたセリフが出てくる
…という感じ。
つまり、
歴史を書くのに、
自分の考えなどいらないし、
むしろ邪魔なだけ。
だから、人生日々更新。