Episode No.6462(20190430):[日記]Diary
平成がはじまった日
The day when HEISEI started
昭和が終わった日…
つまり、
平成がはじまった、その日。
自分は新富町にある
編集プロダクションで働いていた。
大手広告代理店で
宛名書きのバイトを
はじめたところから…
いろんな部署の人に可愛がってもらい、
掛け持ちでバイトをしていた。
その代理店のOBが独立して作った
小さな編集プロダクションの正社員になったのだ。
宛名書きのバイト料は時給500円だった。
今の最低賃金の、半分くらいだ。
そもそも宛名書きなどという仕事は、
とっくになくなっているだろう。
昭和が終わる頃には、
そろそろ担当の仕事も任されていたと思うが、
まだ先輩のアシストが仕事の中心だった。
とある業界の広報誌を制作していて、
その印刷入稿が迫っていたが…
新しい元号が決まらないと入稿ができない。
事務所のテレビの前で
メモ用紙を握りしめて、その時を待った。
やがて小渕官房長官が、
あの「平成」と書かれた額を掲げる。
素早くメモをとると、
すぐさま写植屋に電話をかけ、
「平成、○○体、○級、ヨコ、○歯送りで、○文字分」
…と活字の指定をして、
版下を抱えて、写植屋に急いだ。
今やすっかり使わなくなった業界用語だが、
級は文字のサイズ、
歯送りは文字間や行間のスペースを示す単位だ。
写植屋で打ち上がった文字を
その場で、持ち込んだ版下に
ペーパーセメントを使って貼り込み、
今度は印刷屋に走り…やっと入稿。
今はPCで打ち込んだテキストをベースに
版下のデータを作成して、
それをインターネットで印刷所に送っているが、
30年前は、そんなアナログな時代だった。
だが、30年後の今も、
実は同じようなことをしている。
ギリギリまで原稿を直して、
ギリギリになって印刷入稿…。
便利になった分、
余裕が増えた
…のではなく、仕事が増えた。
写植屋へ入り込まなくて済む分、
机に向かっている時間は長くなり
…肩こりがひどくなった。
こうして、
平成が終わる日に、
振り返ってみると、
あらためて…
道具は進化したが、
人はその分、退化している
…と、つくづく思う。
まぁ、30年は
確実に年をとっているわけだし。
ただ…
少しはできることも増えたかもしれない。
それは、時代とは関係なく、
自分が何かをこなしてきたから、だ。
わからないことが何であるか
…が、わかるようになってきた。
わかったフリをしなくても、
カッコ悪いとは感じなくなってきた。
それも、
ただ年をとっただけのこと
…かもしれないが、
今こそ
やりたいことをすべき時代に違いない。