人間、何がつらいと言って、
誰にも相手にされないことほど、
つらいことはないだろう。

最も、たいていそんな状態に陥るのは
身から出た錆びである場合が、ほとんど。

およそ世間の常識にはずれて、
自己を正当化する輩に
そうした人が多いと思う。

昔、繁華街の裏通りで、
真っ昼間から泥酔したおじさんが、
棒きれを振り回していた現場に遭遇した。

足下もおぼつかないほど
フラフラだったので、
通り魔だと騒ぐほどのこともなく、
道行く人は遠巻きによけながら、
すました顔をして通り過ぎている。

それはそれで都会の異常な光景に見えたが。

自分もそこを通り過ぎた後、
ちょうど交番があったので、
遠巻きに歩く通行人が
車道に出ると危ないから注意した方がいい
…と伝えた。

すると交番の中にいたのは新人警官ひとり。

おそらくは初めての「事件」で
見るからに緊張しているのがわかる。

現場に案内しろというので仕方なく付き合うと、
おじさんを見た新人警官は
警棒を抜き出して叫んだ。

「武器を捨てなさい！」

相手にしてくれる人が現れたおじさんは
大喜びでさらに棒を突きだした。

にらみ合いが続く中、
無線で応援を呼んだ新人警官。

やがて、あたりは
２人を取り囲んだ大きな人だかりに。
パトカーも２〜３台かけつける大騒ぎにとなった。

ベテランのお巡りさんなら…
おじさん、危ないよ。棒はかして。
家はどこよ？
…なんて声をかけて、
こんな騒ぎにはならなかったと思うけど、ね。

目の前に新人警官が現れた時の、
あの嬉しそうなおじさんの顔つきが
今も忘れられない。

だから、人生日々更新。