Episode No.1002(20011110):新しい橋を架ける

壊れた橋を元通りに直すのは・・・新しく橋を架けるより大変だ。

まず、壊れた橋の残骸を取り除かなければならない。
川幅が大きく変化することはないだろうが・・・
残骸を撤去する時にも、新しい橋を架ける時にも、川の流れは簡単には止められない。

まして、それまであった橋を頼りに生活してきた人たちはどうなる?
最初から橋がないとわかっていれば、その道を通ってくる人はいないだろうが・・・
橋を渡ろうと、次から次へと人が押し寄せてくる。

橋の残骸を撤去するためにやって来る作業車も・・・
新しい橋を造るために材料を運搬する車も・・・
橋を頼りにその道を通ってきてはUターンする車の混雑に巻き込まれずには済まない。

やがて混雑がおさまって・・・
ようやく予定通りの作業が進み始めたのは
もう、その橋を頼りにする人が少なくなった証拠。

川の流れより、人の流れの方が・・・はるかに速い。

まず、橋が壊れるまで放置しておかないことが大事。

しかし、天災や人災によって万が一、ある日突然、その橋が使えなくなったら・・・
仮設でもいいから、いち早く人が通れるようにすること。

そして・・・新しい橋は、別な場所に造るに限る。

前の橋が見えるくらいの場所に今より道幅の広い橋を造るのが理想的。
古い橋を通っている人たちにも、着々と新しい橋ができる様子が見えるように。

もしも、少し離れた場所でないと、新しい橋が造れないとしたら・・・
新しい味方が必要だ。

それは、新しい橋が通る道ぞいに住んでいる人たち。

そして、もうひとつ面倒なのは・・・
元々、橋のある場所の道と、新しい橋の道とを
つながなければならない、という点だ。

それだけの作業を追加するだけで・・・工期も予算もふくれ上がる覚悟が必要。
だけど、そこまでやれば最終的には誰も文句は言わないだろうし・・・
その作業を手がけた人の権限範囲は大きく拡大する。

何も面倒なことはしたくない、川を自由に渡れればそれでいい・・・
と考える人は少なくないだろうが
そういう人は、自分で道を自由に選んで走っているようでいて
実は決められた道しか進んでいない。

本気で川を渡ろうと思うのなら・・・裸になって飛び込めばいいじゃないか?

最もその方法で川を渡れたとしても
大きな荷物を運ぶことはできないと思うけれど。

いっそ混乱に乗じて、渡し船をやるのもいいかも知れない。
船を操れるだけの技術があればね。

目に見える道も、見えない道も・・・
昨日までそこにあったからと言って、今日もそこにある保証はない。

仮にあったとしても・・・
少なくとも昨日とまったく同じ状態では・・・ないんだよな。
自分もまわりも。


参考資料:仕事の経験上・・・