THE THEATER OF DIGITAKE 初めての不倫旅行20 5/12 |
■新兵器は役立たず 会社の昼休み。 いつものように宮田は、部下たちといっしょに駐車場へ出た。 上着の内ポケットに忍ばせた眼鏡バンドの効力を試したくて、急いで昼食を済ませた。 が、やっぱりなんとなく恥ずかしくて・・・眼鏡バンドは装着できない。 それより何より、眼鏡がフッ飛ぶほど激しく動きまわるなんて・・・とてもできない。 早々とバレーに加わったものの、結局、動き回っていられる時間はいつもと同じ程度。 昼休みの時間が残っているうちに自分の席へと引き上げた。 この時間の事務所内は、まだガラーンとしている。 少し前なら、鈴木がひとり、自分の席で弁当を食べているところだが・・・今日は休みだ。 このところ・・・と言うか、宮田がリストラの件を話してからというもの、鈴木はよく休む。 春までに残っている有給を使い果たしてしまおうというつもりか・・・。 いや、たとえ休んでいたとしても、新しい職探しに奔走しているに違いない。 宮田が先に戻ったのを知ってか・・・三村がお茶を持ってやってきた。 「すまないね、三村クン。まだ、みんなやってるだろ? バレーボール」 「ええ・・・でも」 宮田は、もう一度、まわりに誰もいないことを確認してから言った。 「この間はすまなかったね、付き合えなくて」 「いいえ、すいません。いつも、わがままばかり言って・・・」 「何か相談があるって言ってたね」 「ええ・・・。課長」 「うん?」 「少し前に人事部長に呼ばれました・・・よね?」 「あ、ああ・・・」 「何か大きな異動でも・・・あるんですか?」 「・・・・」 「鈴木さんも珍しく休みがちだし・・・何かヘンだなぁって」 「・・・やっぱり。そう、思う・・・かね?!」 「じゃあ・・・」 話が確信にふれようとした時、またしても課の連中がドカドカと戻ってきた。 ・・・が、いつもと少し様子が違う。 ちょうど得意先から戻ってきた柳が真っ直ぐ宮田の元へ来た。 「課長!」 「おお、お帰り」 「課長・・・ご存知だったんですか?」 「何を?」 「人事異動・・・今、廊下に貼り出されているの・・・見ました」 「廊下に?」 宮田は、すぐに席を立つと足早に廊下へ向かった。 柳と三村もそれに続いた。 |