でじたけ流 教育論「家族の肖像」
 
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20150816

でじたけ流 教育論784回「家族の肖像」

でじたけ流教育論 digitake.com


熱海駅で伊東線に乗り換える、いつものコース。
突然ドンと爆発音がするので、一瞬テロか…と思ったら、
ビルの隙間から花火が見えた。

夏休みともなれば、
制服姿の学生が少ない代わりに、
首からカメラを下げた観光客でいっぱいの南下列車。

最も最近はカメラと言ってもスマホばかり。
乗り込んできた3人の親子連れもひたすらスマホをいじってる。

どっかりボックス席に腰を下ろしたのは、
中学生くらいの一人息子と中年のスマホ夫婦。

これくらいの年の息子なら、
子供の方がひたすらゲームに興じていそうなものだが、
まだ息子にはスマホは与えていないらしい。
その分、両親は何やらひたすらスマホをいじってる。

電車がゆっくりと発車して、いい案配に揺れ出すと、
手持ち無沙汰の息子はいきなりコクリと船をこぎ出した。

スマホからちょっと目を離して、
息子が可愛い寝顔を見せていることに気づくと、
両親はいっせいに息子にスマホを向けて
パチリパチリとシャッターを押し始める。

視線を感じたのか、
それともシャッターの音がやかましかったのか、
目を開いた息子は
「パパやめてよ〜」と父親のスマホに手を伸ばす。

よくある光景…と思いきや、
その嫌がり方が尋常ではない。

「データ消して!」とかなり強い口調。

それに対する父親の態度も、
これまた尋常ではない。
「うるさい!」と息子の手を力一杯はたく。

その隙に母親は今撮った写真を再生確認している。

「お母さん!」と嫌な顔を見せる息子。

どうやらこの一家では、
父親をパパ、母親はお母さん…と呼ぶらしい。

いったいこれまでどんなことをしていたら、
これほどのことで、
こんなに息子が嫌がるのか?
…妙な違和感を感じずにはいられなかった。

うちでも子ども達の写真はよく撮るし、
最近ではfacebookにアップしたりすることもあるけれど、
基本的に公開は友達限定。

友達の中には
息子や娘と友達つながりになっている人も大勢いるから、
今さら隠しても意味はないしね。

リスクを考慮して、
少なくとも子供が中学になるまでは、
顔出ししない…というルールを自分なりに決めていた。

この「教育論」の初期がイラストなのはそのためで、
その後も顔が特定できない後ろ姿がほとんどなのはそのせい。

さて、電車で乗り合わせた親子。
父親は息子の寝顔を撮って、
嫌がる息子の手をはらいのけると、
またひたすらスマホに興じ始めた。

はたしてその写真をfacebookに上げて、
夏休み、家族サービスをしている自慢をアップしているのか…。
それとも離れたところに住む自分の両親に
可愛い孫の写真を送って親孝行をきめているのか
…は、わからない。

写真は真実を写すものだと思ったら大間違い。

笑みをうかべる少女の写真だけ見て
…可愛いと思うのは当然だろうが、
もし、そのフレームの外に、
躓く老婆の姿でもあろうものなら、
その笑みは一変に醜悪なものに感じるだろう。

そして人は…
真実を信じるのではなく、信じたいものしか信じない。

平凡な家族の幸せな瞬間は、
息子の思いとは裏腹に、
それをうまく演出している
自分たちを誉めてやりたい両親によって作られていた。

やがて、電車は親子連れの下車駅に着いた。

両親にせかされて、後を急ぐ息子。
思いの外、軽装なところを見ると、そこは
パパかお母さんの実家がある場所なのかもしれない。

お爺ちゃん、お婆ちゃんに
「大きくなった」と決まり文句を何度も言われる自慢の息子。
そのわきで、また両親は
何度もシャッターを押し続けることだろう。

一番、家族サービスをしているのは…間違いなくこの息子だな。

人の振り見て我が振り直せ…。

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