20100926
でじたけ流 教育論第529回

恐怖を学べ-でじたけ digitake.com


人を生かすのは「愛」だ。
…と言われれば、そんな気もする。

では…
人を動かすものは何か?
…と問われれば、
「夢」とか「勇気」という
お決まりの言葉は浮かんでくるものの、
この世に生を受けてから今日まで、
さまざまな経験を紐解いていくと
決して「夢」に向かって…とか、
「勇気」を振り絞って活動してきたかどうかは
正直、疑問が残る。

本当に人を動かしているものは
実は「恐怖」じゃないか、と思う。

ここで「夢」が語れないと
「夢のない奴だ」と思われはしないかと
必死で「夢」を語り…
ここで「勇気」を見せられないと
馬鹿にされてしまうと感じて覚悟を決める。

そんな…
体裁が崩れてしまう「恐怖」もあれば、
ただ単純に暗闇から遠ざかろうとしたり、
追ってくるものから逃げたしてみたり…。

さすがに餓死するほどの空腹を覚えたことはないが、
腹が減って動けなくなるようなことがあれば、
このまま死んでしまうのではないかという、
やはり「恐怖」にかられて身を起こすことになるだろう。

ここで取り違えてはいけないのは、
そうした「恐怖」は直接的な痛みではなく、
すべて想像によって生まれたものだ、ということだ。

そういう意味では…
「恐怖」も「夢」も、また想像の範疇。
かろうじて「勇気」だけが
現実を引きずっているようにも感じる。
いや、現実に触れないところに「勇気」はない。

高2の長男は、9月の三連休が文化祭で、
その後の飛び石連休は、ずっと学校が休みだった。

その間は友だちが泊まりに来たりして、
結構な非日常を楽しんでいたように見える。

盗まれた自転車は奇跡的に戻ってきた。

登録番号を警察に知らせておいたおかげで、
放置自転車の中から見つかって通知が来た。

しかし…
悪いことがあって、いいことがあると、
また、悪いことが起きる。

とくに、いいことがあった後は油断しているから
手痛い目に遭う。

せっかく無事に戻ってきた自転車に乗っていた長男は、
脇見運転で柱に激突…自転車を大破させてしまった。

幸い顔を擦りむく程度の怪我で済み、
念のため病院で検査もさせたが異常はなかった。

思えば長男の自転車事故は、これで2回目。
前回は中学の時に原付と接触した。

「恐怖」は、じわじわと「想像力」によってふくらむが、
「痛み」は突然やってくる。
突然やってくるものに「恐怖」を感じている暇などない。

自分の失敗によって自転車を壊し、
そのことで親父に叱られるという「恐怖」より、
「痛み」は突然やってくるんだという
…そんな「恐怖」を察知すべし。

子供に限らず大人でも
怖いものの1つや2つあった方がいい。

それが親でも、恋人でも。

怖さを感じる想像力が、
実は善悪のバランスを保っている源かもしれない。

人が怖さを忘れてしまったら…
それは善悪の判断や、
その判断に基づく勇気ある行動、
あるいは体裁を保とうとするプライドや意地が
なくなってしまうかもしれないな。


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